新しい職場

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奥から顔を覗かせた人が俺と目が合った。不思議そうに俺の方を見る。 「あれ??小宮(こみや)。その人は?」 俺に気付いて隣に立っていた男に声をかけた。初めて名前を聞いた。この人小宮って言うんだ…。 「ビルの前に立っていて、ウチに用があるって言ってたんで連れて来ました」 「あっ!もしかして代永くん?」 「は…はい」 俺は俯いて返事することしかできなかった。男は奥から俺の方に向かって歩いて来る。いきなり詰まる距離に思わず一歩後ずさる。 「初めまして。私、M i C開発営業部係長の佐野(さの)と言います。因みに君を連れてきたこの大きな男が小宮です」 「どうも」 俺が小宮の方を見上げると小宮は小さく会釈した。 「あっの…代永 景都です。よろしくお願いします…」 「代永くん、宜しくね!」 佐野係長は俺の手を取って思いっきり振り回す。あまりのテンションの高さと力の強さに、俺の身体も一緒に振り回されそうになる。 「…御子柴(みこしば)部長居ないですけど良いんですか?」 辺りを見回した小宮が佐野係長に声をかける。この人が係長なら部長もこんなハイテンションの人なんだろうか?ついていける自信がない…。 「あー、今日から急遽大阪。ほら、昨日ゲリラ豪雨で向こうのサーバーやられちゃったらしくてさ…」 佐野係長が申し訳なさそうに話す。 「あー確か…昨日ニュースでやってましたね…浸水被害や落雷が凄かったって…」 「そうそう…それで他の支社や部署からも応援出てるらしいんだ…どれだけダメージ受けたのか分からないから戻りは分からないって言ってたよ…ーーーそういう訳なんだ、ゴメンね代永くん」 佐野係長が俺に向かって『ゴメンね』と手を合わせた。俺は『大丈夫です…』とだけ答えた。
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