3517人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい…宜しくお願いします…」
総務と聞いて嫌な事を思い出す。俺が辞めてあの仕事は誰がしているのだろうか…。今、どうなっているんだろう…。もしかして他に人を入れて俺と同じ目に遭っているんじゃ…俺の代わりになっている人がいたらどうしよう…。
もう3ヶ月、まだ3ヶ月…。前の職場を離れても記憶はいつまでも消える事なく、少し落ち着いたつもりでもちょっとしたきっかけで心と身体に黒いインクを落としてじわじわとシミを広げていく。
きっと、このインクはいつまで経っても無くならないと思う…。
込み上げて来た吐き気に慌ててウォーターサーバーに向かう。水を取ってきて薬を飲む。幸いデスクの両端はファイルなどが積み重なっていて、薬を飲んだのは誰も気づかれていないようだが、『はぁーー』と思いっきり溜息をついてしまった所を小宮に聞かれてしまった。
「やっぱり具合悪い?初日だからしんどいとは思うけど…大丈夫?」
「すみません…大丈夫、です…」
「…顔色良くないから休憩室行くか?」
いきなり来て休むなんて出来ない。そう思って俺は首を横に振った。
すると小宮はいきなり俺の手を取って立ち上がった。身体の大きい小宮に引っ張られ俺も一緒に立ち上がる。
「よし!メールチェック完了!新人さんに社内案内してきますね!!」
「おー!頼むわ」
「えっ…ちょっと……待って下さい!」
小宮は俺の手を取ったまま開発営業部を出てしまった。
最初のコメントを投稿しよう!