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「あの…もう少し静かにしてもらえます…?」
別の仕切りから男性が顔を出す。まさか俺以外に寝てる人がいるとは思わなかった。
「「すみません」」
俺と小宮が一緒に謝る。男性は『昨日、飲みすぎたんだよ…会議まで寝かせてくれ…』とブツブツ呟きながら再び布団へ潜って行く。
その様子を見てつい、俺と小宮は顔を合わせて笑ってしまった。
「代永も調子悪いんだから、ちょっと寝てろよ。その間俺戻って仕事してくる…」
小宮の口調が完全に元に戻ってホッとした。
「う…ん。ゴメン、初日から…」
全然慣れないが出来るだけ口調を普通にしてみる。
こうやって仕事中普通に人と会話することも前の時は殆どなかったから人と普通に話すのが少し苦手になった気がする…。
「仕方ないって。最初だから余計緊張もあっただろうし…んじゃ、また後で来るわ」
そう言って小宮は休憩室を出て行った。
今までと全く違う会社の雰囲気に戸惑いながら、俺は仮眠スペースで少し休む。さっきまで感じていた気持ち悪さはいつのまにか無くなっていて、色んな事に頭が疲れたのか直ぐにストンと眠りに落ちた。
1時間程して小宮が起こしに来てくれた。小宮に会社内を案内してもらい、総務部で写真入りのIDカードを発行してもらう。流石、大会社…他の部署もテキパキと仕事をしている。そしてやっぱり笑顔で仕事をしているのが印象的だ…。
前は会話も表情も無く淡々と仕事をこなし、関わりたくないと他の人達と顔を合わせる事すらなかった。
比べちゃいけないと思いつつもどうしても色々と比べてしまっていた…。
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