休日

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天野には学生の時に同じコンビニのバイト先で知り合った同性の恋人がいる。 俺も付き合い始めた頃、天野の恋人を見た事がある…凄いチャラい感じでバイトの態度も良いとは言えず…天野とは全く逆という感じの男だった。 どうして天野がこんな奴と?とまで思ってしまった程、天野とは全く違うタイプの男だった。 その恋人は色々天野に服を着せて写真を撮ったりする事があるらしいのだが、着せられたり写真を撮られている内に天野自身も楽しくなってしまった。 撮られるのならもっとオシャレに可愛く(?)もっと綺麗に撮られたいと思うようになって、大学を中退してファッションやメイクも習える専門学校に行こうとしたが、親に思いっきり反対されてしまった。 説得の末、両親に『大学さえちゃんと卒業してくれれば後は自由にして良い』と言われたので、大学を卒業後バイトしながら学費を貯めて専門学校に通っている…と言う訳だ。 その恋人はバイトを辞めたらしいが、今でも付き合っていて凄く幸せだと…満面の笑顔で話してくれた。 「ホント…天野って恋とかそういうハマったら真っしぐらだね…後先考えないというか…家庭教師のバイトもそうだったんじゃ?」 「アレは、面接の時に一目惚れして…少しでも近付こうって思って登録したら、向こうが『条件に合わない』って登録やめちゃったんですよ…その後コンビニで会って話したら『お前の事なんて知らない』って玉砕されましたけどね…でも、そのお陰で今、すっごい幸せなんです!!やっぱ好きな人が居ると仕事や勉強って熱入るじゃないですか?」 「あーハイハイ。またいつもの惚気だよ…」 「新田先輩はアパレルで店長してるんで色々話聞かせて貰ってるんです!」 「半分ぐらい惚気だけどな…『こんな服似合うって言われたんですけど、先輩の店にあります?』とか…お前卒業したら絶対ウチ来いよな!」 「分かってますよ!ちゃんと勉強します!」 そうやって話す2人はとても楽しそうで、眩しくて、羨ましかった…。俺が失った夢や恋、熱意を持ってる2人… 少しだけ黒いインクが俺の心と身体にポタリと落ちた。
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