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そんな話をしている中、俺達の前に一台のワンボックスカーが止まった。窓が開いて男が1人顔を出した。
「遅れて悪い…美千留が出る前にぐずった。早く乗ってくれ」
やって来たのはこの4人の中の唯一の既婚者で、父親になった林だった。
今回、林が車を出してくれたらしい。俺は林の隣の助手席に、天野と新田は後ろの列にそれぞれ座って、車は新しくオープンしたというショッピングモールに向かって進み出した。
運転している林に話しかける。
「林、久しぶり…美千留ちゃん元気?」
「もう元気過ぎて困る。1歳過ぎたら急に力強くなった…これでもうすぐ2歳のイヤイヤ期が来ると思うと恐ろしいわ…」
林は学生時代に学部の違う同級生と付き合っていて、卒業して直ぐに2人は結婚した。
その時には既に彼女のお腹の中には美千留ちゃんがいたのだ…。
今は大学で職員をしながら立派に育児もしている。『恐ろしい』なんて言いつつも、美千留ちゃんの事を話すと笑みが溢れている。
凄い話すタイプではなかったが、俺たちの中では一番しっかりしていたのが林だった。
「そっか…立派に父親してるんだ…」
「俺なんか全然だ。立派なのはアイツだ…腹にもう1人子供いるって言うのに家事も子育てもしてるからな…」
林の言葉に後ろに居た2人が反応する。
「えっ!何なに?林んとこ2人目?いついつ?」
「林先輩、おめでとうございます!男の子ですか?女の子ですか?」
「今、安定期に入ったばかりだから来年初めって所かな?まだ分からないけど、どっちでも嬉しいよ」
「おめでとう、林」
「有難う!!」
運転しながら話す林の顔を横目に見る。嬉しそうな照れ臭そうなはにかんだ笑顔。その笑顔から普段から幸せな日々を過ごしているんだと容易に想像できた。
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