休日

8/16
前へ
/642ページ
次へ
林の嬉しそうに応える言葉にもう一滴黒いインクが落ちる。 ……俺、何やってるんだろう…… 忙しくても楽しく働いている新田。恋人との出逢いで新たな道を切り開き始めた天野。新しい家族ができる喜びを噛み締めている林。 暫く会っていない間に皆んな前に向かって進んでいる…。俺はあの時から止まったままだ……。前への進み方も進む勇気も全てあの会社に居る内に忘れてしまった。 何だか置いていかれた気分になった…。俺は3人が盛り上がっている中、ショッピングセンターに着くまで眠ったフリをして窓の外をただ眺めていた。 新しく出来たとあって、ショッピングセンターは凄い人で賑わっていた。 「よし!あの店だ!行こうぜ!!」 新田と天野の目的はこの地方に始めて入ったファストファッションブランドの店らしい。市場調査や勉強も兼ねて2人は此処に来たかったらしい。 新田と天野は店舗の奥に進んでいった。 「全く…元気だなあの2人は」 「そうだね…でも羨ましいよ。好きなものや目的ががハッキリしていて」 「そうだな…せっかくここまで来たし、俺も見たいものがあるけどどうする?」 「後で合流しようか…30分後にここでどう?」 「わかった。新田と天野には俺から伝えておく。後でゲーセンは皆んなで行くから先行くなよ」 「うん…分かった…」 そう言って俺は3人から離れてショッピングモールを1人で歩き出した。 特にコレといって欲しいものがある訳じゃないけど、せっかくだから何か良いものがあればと思い、この地方に初めて入ったというインポート雑貨、服飾雑貨のお店に入ってみた。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3520人が本棚に入れています
本棚に追加