休日

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「うぅ…ん。もう着いたぁ?」 「まだだ。でももうすぐ着くからそろそろ起きとけよ」 「ふぁーぁい……林、サンキューな。ほら、天野起きろ」 欠伸をしながら新田が天野の肩を持って揺すって起こす。 「んっ…緋彩(ひいろ)ぉ…?もう、ちょっと寝かせてぇ……」 「あっはっは!コイツ!エロい夢でも見てんのか?彼氏の名前読んで寝惚けてやがる!!」 新田がゲラゲラ笑いながら今度は額にデコピンして天野を起こす。デコピンした瞬間、天野の顔が痛みに歪む。額を抑えながらゆっくりと天野が目を開けた。 「っ!!なんか…額が痛いんですけど…」 「おはよ!起こしたのが愛しの緋彩クンじゃなくて悪かったな!」 天野は急に恋人の名前が出てきて顔を赤くする。 「なっ!なんでココで緋彩の名前が出るんですかっ!!」 「さぁ…なんででしょー?ホントお前って面白すぎ!」 新田は笑いが抑えられず腹を抱えて笑いだす。天野は寝起きで良くわかっていないので混乱する一方だ。運転席と助手席の間に身を乗り出し天野が聞いてくる。 「ええっ?なんでですか?林先輩!代永先輩!俺なんかヘンな事言ってました?」 「さあ?おれは聞いてないぞぉー。もうちょっと寝かせてぇとか聞いてないぞ!」 「…俺も聞いてないけどぉ?緋彩クンって言うんだぁ、天野の恋人。緋彩クンに普段から起こして貰ってるの?」 「ちょっと!ええっ!?俺そんな事言ったんですか?!うわぁ…かなり恥ずかしい…」 (とぼ)ける林に続いて俺も惚けてみる。天野の反応が面白くて俺も林も声を出して笑ってしまう。 なんだか久し振りに自然に笑った気がする。 久し振りにこの4人で会って本当に良かった…。俺のことを気にかけてくれている友人がいると思うと何があってもこれから頑張れそうだ…。 同時にあの時も相談すれば良かったと後悔の気持ちが湧き上がってくる。後悔してももう遅い…俺の心は学生時代の様には戻らない。 壊れてしまった心と身体はもう二度と元の状態には回復しないんだから… 溜まってしまった黒いインクは、もうなくなる事がないと痛感した…。
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