出会い

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「ちょっと!君!大丈夫か?」 目の前に大きな手が見えた。そして、男性の声がした。 反応しようとするが思う様に身体が動かない。口を動かそうとするが、息が苦しくて金魚みたいに口をパクパクさせて酸素を取るしか出来ない。 「どうしたの?…大丈夫だからゆっくり呼吸して…そう、ゆっくり…」 男は俺の傍に座り背中を上下にさすりながら俺の呼吸を合わせてくれる。少しすると呼吸は落ち着いたが吐き気は一向に収まらない。確か、鞄の中に頓服の安定剤と吐き気止めがある筈だ。 俺は何とか鞄に手を伸ばそうとするが、身体を動かそうとすると吐き気が襲ってくる。男は俺の様子に気付いたのか鞄に目線を向けた。 「鞄?鞄の中に何かあるの?ーーー開けていい?」 俺は頷くだけで精一杯だった。俺が頷いたのを見た男は俺のショルダーバッグを開ける。ポケットの中に手を入れて薬が入っているピルケースと【頓服薬】と書かれた病院の薬袋を見つけた。処方された病院名を見て男の顔が一瞬曇ったように見えた。薬袋には【精神科・心療内科 AZメンタルクリニック】と書かれていた。 ピルケースと薬袋を持って男は俺の目の前にかざす。 「ーーーコレ?今飲む薬?水は…ちょっと待ってて!」     
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