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番外編③初詣よりも
「あけましておめでとうございます、芥さん」
「あけましておめでとう、翔太」
ベッドの中で抱き合いながら新年を迎えた。
恋人同士となった翔太と篠原は、日々幸せを感じながら過ごしていた。
恋人同士になるまで色々とあったが、無事に恋人同士となってはじめて一緒に過ごす年末年始。大晦日の晩から、翔太は篠原のアパートにお邪魔している。
篠原には、「両親と一緒に過ごさなくてもいいのか」と尋ねられたが、高校生にもなってまで家族と過ごすこともないだろうと思ったが、幼い頃に父を亡くした母の事を思うと胸が痛んだ。
だが、両親を亡くしてひとりで年末年始を今まで過ごしてきた篠原のことを考えると、いてもたってもいられなかった。
「ひとりで年末年始を過ごすなんて、僕が許さないです」
「翔太……」
「それに、ひとりで過ごすより、二人で過ごしたら寂しくないですよ」
本音を言えば、受験前の篠原と年末年始を一緒に過ごしたい。
恥ずかしくて本人を目の前にして言うことはできないが、言えば篠原は嬉しく思ってくれるだろうか。
「でも、翔太が俺と過ごせば、翔太のおばさんがひとりに……」
「えっと、その……」
「翔太の気持ちは嬉しいよ。ありがとう、俺のこと考えてくれて。だけど、おばさんときちんと話をしておいで」
「そ、そうですよね。ごめんなさい」
篠原にはお見通しだ。そういうことで、篠原の言う通り翔太は母に年末年始の相談を持ちかけたのだ。
すると――。
「あら、いいわよ。お母さん、おばあちゃんの家に行く予定だったから。翔太も予定がなければ連れていくつもりだったけど……翔太も高校生だものね。仲がいい篠原くんと過ごしたいわよね」
「仲がいい」と言われたが、実際には「恋人」だと母に言うことはできず、後ろめたい気持ちでいっぱいになってしまった。
(いつか言えたらいいな)
そんなことを思いながら了承を得た翔太だったが、いくつか母に約束事を言い渡された。
年末年始で規制が緩くなっているが、高校生といえど子供二人で夜中から初詣に並ばないこと。初日の出を見たいのであれば早起きをして始発で向かうこと。決して怪我をしないこと。
母から、これだけはという最低限の約束をされた。
それは、篠原にも翔太の母が伝えた。
こうして、翔太は大晦日の夜から篠原のアパートに泊まることが決定したのだ。
ベッドの中でくちづけを交わす。ゆっくりと離れていく唇。ソッと瞼が開き、視線がぶつかり合う。
恥ずかしさと照れくささが入り混じる中、新年の挨拶をした。
「……今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
優しく微笑みながら、翔太の背中のラインを篠原がいやらしい手つきで撫でる。
くすぐったく、身じろぐ翔太。
「ん、かいさん……」
「翔太」
日付が変わる三十分前あたりから、お互い一糸纏わぬ姿になりベッドの中でいちゃつき合っていた。何度もくちづけを交わし、微笑み合っての繰り返し。時折、今みたいに篠原にいやらしい手つきで触れられ、身体が熱を持ったときには翔太から「まだお預けですよ!」と、頬と耳を真っ赤に染めながらも抵抗を見せた。
それでも、身体の熱がそう簡単に引かないのはわかっている。
ただ、身体の奥底で熱が燻るだけだ。
そして、とうとう新年の幕開けと同時に挨拶をして、何度も触れ合った唇へとキスをしたのだ。
「芥さん。来年も、また、んっ……ふ、一緒に迎えましょう」
「……ん。来年も再来年も、ずっと翔太と迎えたい」
「はいっ! ぁん、ッ」
来年も再来年も、この先もずっと――と一緒にいることを考えてくれている篠原に嬉しさを感じつつも、少しずつ与えられていく愛撫に我慢ができなくなっていく。
身体が熱い。いやらしい手つきで撫でられ、かつ好きな人から与えられる愛撫なのであれば尚更だ。嫌でも身体は反応してしまう。
現に、翔太の性器は二人の身体の間で勃ちあがっている。
それは、篠原も気づいていた。
緩く腰を動かし、篠原も己の勃ちあがっている性器を翔太のものに押しつける。
「ん、あ……!」
芥さんの熱い、と熱い吐息と共に言葉を零す。
たったそれだけでも、篠原には興奮の材料となり、更に性器が肥大した。身体を横向きにしているせいで、緩い刺激しか与えられない。
篠原は体勢を立て直し、翔太を仰向けにしたあと両脚を開かせて間に身体を入れて性器同士を重ねた。はじめはゆっくり動かしていた腰も、気づけば激しくなっていく。開いていた翔太の脚は、いつしか離れないようにと篠原の腰に巻きついていた。
掛布団をかけたまま行為をはじめていたのに、その掛布団でさえもベッドから落ちている。掛布団から「二人の邪魔はしませんので!」と声が聞こえてきそうだ。
「んっ、あ、ああっ」
「ッ……新年早々、翔太とえっちするの、いいね」
「ひ、ぁあっ……しり、ませんっ……ああっ!」
ぐりゅ、ずちゅ、と卑猥な水音を立てながら激しく責め立てていけば、お互い限界が近づきそのまま熱を迸らせた。びゅく、びゅく、とお互いの腹部を白濁が汚す。
「んんっ」
唇を塞がれるのと同時に、放った白濁が腹の間でぬちゅ、と音を立てた。
「……新年にやるえっちが『姫はじめ』って知ってた? 諸説はあるけど、二日目にえっちするのが本当の『姫はじめ』とも言うんだって」
「っ、知りません!」
「はは、顔真っ赤。可愛いなあ」
揶揄う篠原の顔は胸元に近づき、乳首に舌を絡めた。主張している突起に唾液を絡めて、テラテラといやらしく濡れているそれはとても美味しそうだ。
篠原から与えられる愛撫に、言葉に、全てが媚薬みたいで身体が常に興奮していて熱い。快感でおかしくなりそうな身体。何度も身体を重ねているはずなのに、いつまで経っても恥ずかしくて、翔太は篠原の前でいつまでも初々しい姿を見せてしまう。
もっと篠原を感じたい。
強く。――強く感じたい。
快楽を求めているのに、いつも曝け出すのが恥ずかしかった。
「ねえ、翔太」
「んっ、はい?」
子犬のように舌先でちろちろと乳首を愛撫していた篠原は、なにか思いついたのか翔太の名を呼んだ。
その表情は、とても意地悪そうな笑みを浮かべていた。
「今日は違う体位で気持ちよくなろうか」
「……へ?」
翔太の知っている体位といえば、基本的な正常位と後ろからのバックくらいだ。えげつない体位だったらどうしようと不安になりながら、篠原は「今日は翔太が上になってもらうからね」と言われた。
その発言に、まさか――と青褪めそうになった。
だが、それはただの杞憂にしかすぎなかった。
「上は上でも、翔太が俺を襲うなんて一生ないから」
「……!」
それもそれで、男のプライドとしてどうなのだろうか。
翔太は頬を膨らませた。
しかし、快楽で熱を孕んでいる濡れた瞳と、上気した表情でそのような態度を取られても、ただ篠原の下半身に直撃するだけ。
篠原の性器は、馬鹿みたいに完勃ちしていた。
翔太の痴態を見て、射精しないよう理性を総動員させた篠原。
いつもなら篠原に押し倒されている翔太だが、今回は逆で、座っている篠原の上に跨った。
「きちんと支えてるから、ゆっくり……そう……」
「ん、ッ……だ、大丈夫、ですか? ……ぅ、あっ……」
硬く張り詰めている篠原の怒張を固定したまま、後孔に切っ先を押し当てる。重力で一気に奥までいかないよう、篠原が翔太の腰を支えてはいるが、たまに悪魔の尻尾を見せる彼のことだ。
意地悪く、いつ、どこで手を離してくるかわからない。先端を押し当てただけでもひくひくしている後孔は、今か今かと待ち構えている。
篠原を受け入れる態勢はばっちりだ。
「っ、はぁ……あ、ど、どうしよッ……」
「大丈夫。ほら、ゆっくり息を吐いて……」
「ん、は……はー……ぅんあ、あっ」
「そう……その調子」
「んあ……あ、はい、って……くぅ……っ」
不安や気を逸らすために翔太へキスをして舌で唇を抉じ開けて絡ませてくる篠原。お陰で、力んでいた身体が自然と抜けて、少しずつ性器が翔太の胎へと挿入っていった。
「んんっ、は、あッ――……ひ、うっ……!」
「ッはあ……挿入ったね。痛い? つらい? ちょっと馴染むまでちゅーしてよっか」
「ん、ちゅー、したいっ……ぅんんッ」
太い部分が挿入されれば、あとは一気に沈んでいくだけ。
苦しい。いつもの正常位よりも、圧迫感を感じるのは気のせいだろうか。
そして、いつもより篠原をたくさん感じる。
翔太は、頭の中をふわふわさせながら、挿入したまま動かず、しばらく篠原と熱いキスを交わしていた。
「は、んっ……ちゅ……むぁ、んっ……はっ」
何度も舌を絡めて、貪るようなキスをする。舌から伝わる篠原の優しい気持ちが、翔太の身体全神経に流れて、中から犯されている気分になる。
身体が、キスによる興奮でますます昂る。
それに、胎に挿入っている篠原の性器を自然と内壁がぐにぐにとうねり締めつけているような感覚がして、身体がうずうずとしていた。
「ちゅ、……は、ぁ……しょーた」
「ん、っあ、かい、さんっ……」
「そろそろ、ゆっくり動いてもいいかな? 翔太の身体、俺が欲しい欲しいって強請ってるみたいなんだけど……」
「……っ!」
身体は正直だよね、と言う篠原に、恥ずかしくてなにも言えない。可愛い、と頬にキスされて、そのままゆっくりと翔太の腰を持って軽く揺すりはじめた。
「はぅ……んぁ!」
「翔太も腰動かせる? 自分の気持ちいいとこ、探してごらん」
「あっ、ぁああっ!」
言われた通りに恐る恐る腰をゆっくり動かしながら、翔太は己の気持ちいい場所を探っていく。
篠原の上で踊る翔太は、篠原の瞳にはいやらしく映っているのだろう。気持ち良い場所に篠原の性器で擦られ、快楽の波へ溺れていこうとする。
恥ずかしい喘ぎ声をあげながらも、翔太は腰を振った。
緩やかに突き上げながら、篠原は片手で翔太の性器を扱きはじめた。同時責めだけは、快楽が二倍となり強く感じてしまうから苦手だ。
「んあ、あっ、ああ、かいさんっ、かいさんっ」
「可愛い……翔太、可愛い。可愛いから、俺も止まんないっ」
「ふぁあ、あっ!」
対面座位での緩やかな突き上げでも、ひとつの突き上げの力は大きく、翔太は篠原の首に腕を回して耳元で喘ぎ声をひっきりなしに零した。喘ぐ度に篠原の性器がどくどくと肥大していくのがわかり、胎で感じてくれているのだなと嬉しくなる。
そんな感動も、篠原の強い突き上げに翔太は背を反らした。
重心が後ろへと傾き、そのまま篠原が覆い被さるようにして倒してきた。
「はは……翔太のやらしい姿、もっと見たかったけど、やっぱり翔太を見下ろすほうがいいや」
「っ、もう……ひんっ!」
「翔太のやらしい身体と声がいけないんだよ。俺のちんこ、痛いくらい膨張してる」
「ううっ……悪魔ですっ」
「そんな悪魔が大好きなのは誰かな。ほーら」
「あ、あぅ、んは、っ」
挿入したまま対面座位から正常位へとシフトチェンジし、形勢逆転で篠原が抽挿をはじめた。
ぱちゅん、と強く穿たれ、身体が快感に戦慄く。
「やあっ……お、っき、ぃ……!」
「っ、はぁ……翔太が可愛いからね」
「あ、あん、ああっ」
リズムを刻むように穿たれた腰は徐々に激しくなっていく。
与えられる快楽に頭がぐちゃぐちゃになりながらも、翔太は篠原にしがみついた。がつがつ穿たれ、ごりごりと前立腺を張ってる部分で擦られ、身体が小刻みに痙攣を起こした。
ぞくぞくと全神経が戦慄き、快感が湧きあがってくる。
「ひぅ、あっ、あん、あ、ああっ」
「翔太、しょう、たっ……!」
「かい、さんっ、ぼく、もうっ……あ、ああっ」
しがみついていることで、お腹の間で擦れている翔太の性器は鈴口から先走りがしとどに溢れ、涎のように垂らしていく。
身体が密着する分、篠原をより近くで感じられ、快楽と同じくらいくらくらしてくる。雄の匂いが鼻孔を擽り、翔太はぞくぞくした。
強い快楽の波に、翔太は身を震わせる。
「あ、ぁああっ! あ、ひぅ、ああ、んぁっ!」
「くっ、翔太、しょーた……っ、はぁ……」
きつく篠原を締めつけ、翔太の中に熱を吐き出してきた。叩きつけてくる熱に、翔太は身体を魚のようにびくびく撓らせ、快楽へと酔いしれていた。
(……気、失いそう)
力強く篠原に抱きしめられ、胎で篠原を受け入れ、翔太は恍惚な表情をしていた。
篠原からすればそれはとても惹かれるものがあり、絶頂を迎えたばかりの性器もすっかり自然と元気になってしまう。
「あっ、ん……」
「……翔太、ごめん。もう少し、俺につきあって」
「……ふぇ?」
「あー、もう、そんな可愛い表情しないでっ」
「え、あっ……ちょ、か、かいさ、……あ、ああっ!」
挿入したままの性器は、一度も抜かれることなく容赦なく翔太を責め立てた。
篠原に抱きしめられたまま、目を覚ました翔太。
身体のだるさはあるが、情事特有のべたつきがないのは篠原が綺麗にしてくれたのだろう。
(……あれから記憶がない)
篠原が起きたら礼を言わなければいけないと思いながら、隣で気持ちよく寝ている篠原を起こさないように微笑んだ。
しかし、身体が思うように動かない。
身体を重ねたあとはいつもこうだ。
約束している初詣は行けるだろうかと考えながら、篠原の腕に抱かれたまま大人しくしていた。
「――……ん、ぁ……しょ、た?」
「あっ、お、おはよう、ございます……」
なぜか尻すぼみしてしまった。
情事中も、情事後も、いつまで経ってもなれない。恥ずかしくて、照れくさくて語尾が小さくなってしまった。
「おはよう、翔太」
違和感なく、自然と触れるだけのキスを仕掛けてくる篠原。
いつでもキスができる至近距離なだけに、翔太の心臓は朝からどきどきしっぱなしだ。
「身体、大丈夫?」
「あ……だ、大丈夫……じゃない、みたいです」
「まあ、いつもとは違う体位でやったからかな。俺の上で乱れている翔太の姿、いつ思い出してもいやらしくて可愛い」
「……っ! 思い出さないでください!」
耳を真っ赤にして怒る翔太だが、篠原にはそれすらも可愛く見えて笑っていた。
「笑ってごめんって。でも、本当のことなのにな……じゃあ、今日もゆっくりいちゃついて、初詣は明日行こうか」
「……あ」
「初詣は逃げないし、身体をゆっくり休めることも大事だよ。今日は俺が尽くしてあげるから。あと、きちんとおばさんに連絡すること……って、まあ本音はもっと翔太と一緒にいたいんだけどね」
「僕をこんな風にさせたの誰ですか! でも、もう一日芥さんと一緒にいられると思うと嬉しいです」
「犯人は俺だね。大丈夫、今日はキスだけで我慢するから」
「~~っ、当たり前です!」
朝ごはん用意するよ、と言ってベッドから出ようとする篠原に、翔太は小さな声で「ど、どうしてもって言うなら、触りっこだけなら……」と言うだけ言って掛布団を頭から被った。
「……え?」
思いもよらぬ翔太の言葉に篠原は目を丸くして、頭から被っている翔太ごと抱きしめた。
「そんなこと言ったら、本当に甘えちゃうよ。ただでさえ、毎日翔太が足りなくて困ってるんだから」
「し、知りません……!」
「言い逃げする翔太は悪い子だね」
くすくすと笑いながら弄り倒してくる篠原に、翔太は掛布団の中で顔を真っ赤にしながらも幸せな笑みを零していた。
終わり
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