6人が本棚に入れています
本棚に追加
「響、大丈夫。怖くないよ。ねえ、ヒロ。」
ヒロ、と母が呼んだ男は、橋の反対からゆっくりと近づいて来た。
目深に被った帽子で顔はよく見えないが、微笑んでいるのが分かった。
「夢子さん、久しぶりだね」
男は優しげな声で母に言った。
「元気そうでよかった」
母は男に微笑みかけた。
「響、お父さんの弟のヒロだよ。あなたの叔父さん」
叔父さん、という言葉に僕は体を強張らせ、母の後ろからそろそろと男を見上げた。
すると男はしゃがんで僕の目線に合わせてつば広帽を脱いだ。
美男と呼ぶには少し平坦な顔をしていたけど、僕が見たことのないすごく優しい目をしていた。
「響、大きくなったね。ずいぶん大きくなった。」
僕は見慣れぬ叔父というものに驚き、何も言えずに母の後ろにぴったり付きながらその瞳を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!