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02-蘇生
息を吸う。苦しくはない。うとうと開いた目に映ったのは、見覚えのあるアパートの天井の、安っぽい蛍光灯。大丈夫だ、保護されている。俺はそっと起きあがって、反射的に水を探した。畳に敷かれた布団の枕元に、ペットボトルのミネラルウォーター。本当に助かる。
水を飲みながら隣の部屋を覗くと、ナナの長い髪が見えた。声をかけようと息を吸いかけたところを、びっくりして振り返ったナナと目が合う。ナナが飛びかかってきて首に巻き付く。俺はペットボトルを取り落とした。
「高矢、……おはよう」
耳元で小さくつぶやく声。俺は咄嗟に、ああ、だか、うん、だか曖昧な言葉を返した。
「もうっ、久しぶりなんだからねっ! もう少しうれしそうにしてくれたっていいでしょ!?」
飛びかかるのと同じ勢いで俺から離れて、ナナは恨めしそうに俺を見た。
「仕方ないだろ。生き返ったばっかりなんだぜ?」
俺がそう言うと、ナナはちぇっとばかりに一瞬いじけて見せ、次の瞬間には満面に笑顔を戻していた。
「そうだよね。ごめん、ちょっとはしゃぎすぎちゃった。お風呂いれなきゃね? 服も、死んだときのままだし」
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