第一章 See What I've Become

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 ティディエの命令に、使用人たちがシャベルとレンガをもってきた。レンガをてこに、シャベルを踏んで、罪人のほうを杭から抜くことにしたのだ。  処刑台の上で兄のグイドが、縄の具合を確かめている。絞首刑の縄が切れたら、罪人は神の思し召しにより、無罪となる。罪人は先程、ご令嬢がきっちり仕留めてしまったので、その心配はないが、やはり縄が切れるのは死刑執行人にとって不名誉なことだ。  はみ出た腸を首に巻き付け、罪人が吊るされる。群衆が歓声をあげる。身なりの悪い連中が先を争うように、罪人が縛り付けられていた杭や手足を結ばれていたロープに群がった。杭に爪をたて、ロープを引っ張って奪い合う。罪人の血のついた布や杭、ロープは、犯罪者にとって幸運のお守りとなる。好事家が高く買ってくれるからだ。絞首刑の罪人を勝手に許可なく下ろすことは、禁じられている。一番高値がつくのは、罪人を吊るしているロープだ。罪人が腐り落ちるか、次の絞首刑の順番が来るまで、待つしかない。罪人の血が滴った絞首台の床板は、いずれ夜中に剥ぎ取られ、持ち去られるだろう。 「ちぇっ、今日は斬首はないのか。つまらないなぁ。早く斬首を失敗しないかな。だって、失敗して二度斬りしたら」 「罪人を必要以上に傷つけた罪により、イプシランティの首は斬られちゃう」     
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