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双子の道化師の幽霊がつまらなさそうに、騒ぐ群衆の上で寝そべった。
指先で自分の頭を回している。
「父の首を斬ったグイド・イプシランティ。早くこっちにおいで」
首なし幽霊が、死刑執行人グイドの周りを舞い踊る。
「いつか兄の首を斬るグレン・イプシランティ。早く兄貴の首を斬りな」
双子の道化師の言葉にグレンは、両手で耳をおさえ、うつむいた。
「兄さん、この子僕たちの声が聞こえてるよ!」
「う~ん? 本当かなぁ、どぉれどれ?」
双子の幽霊が、うつむくグレンの顔の下に手を差し出す。肩から腕をつたって転げてきた幽霊の生首を手の上に載せ、必死に目をつむるグレンの顔をのぞきこむ。
グレンは、おびえすくんで必死に顔をそむけた。グレンの異変に気づいたグイドが処刑台からグレンに声をかける。双子の道化師の幽霊を見えないグイドには、なにが起きているのかわからない。人形に切り抜かれた紙が双子の道化師の顔に張り付いた。
「なにこれ! なにこれ!」
「きゃああ! 熱い熱い! 取って! 兄さん! これ取って!」
人形の切り紙に追われ、双子の道化師の幽霊が逃げ出した。
「あいつだ、新しくこの街に来た賞金稼ぎ」
直垂(ひたたれ)、烏帽子(えぼし)の若い男が、街を仕切る三部会の席に呼ばれていた。
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