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このあたりの顔立ちではない。長い黒い髪を錦の袋に入れて背に下げている。
反りのついた異国風の太刀を下げている。平安時代の陰陽師のような出で立ちだが、極東の島国の風俗などグレンには知るよしもない。
柔和な面立ち。白い肌。黒い眉。黒い瞳。双子の道化師の幽霊を追い払った人形の切り紙を指に挟み、グレンを見ていたずらっぽく微笑む。
「賞金稼ぎ龍胆(りんどう)。約束の賞金だ。よくやってくれた」
「痛み入りまする」
たどたどしいラテン語で龍胆と名乗った男が賞金の袋を受け取った。ワラキア公国は、かつてローマ帝国の属州だったことがある。巨大な銀山があるからだ。ローマが去ってからいくつもの異民族が侵入してきては、征服していった。雑多な民族ごとに固まって住まう、多民族モザイク国家だ。ワラキア公国の肌の色も髪の色も顔かたちもちがう連中に、あなた方は何人かと尋ねると彼らは、全員が胸をはって、ローマ人だと答える。
イタリアから遠く離れたこの地で、精一杯ローマ人のふりをして生きている連中がいる。
ローマ人のマニアということで、やがてルーマニアと言う国名になる。
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