第一章 See What I've Become

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「頬に逆十字のあざがあるだけでも気味が悪いったらないのに。うそまでつくのかい? 本当に気持ちの悪い子供だね」 『僕にだけ見える頬の赤い蛇は、悪魔の兆し(きざし)』 『僕はいらない子供だった』  1452年、東欧。城塞都市ジルジウ。街の公会堂前広場には、処刑台が据え付けられていた。処刑は、一罰百戒の裁きであり、正義であり、教訓であり、何よりも娯楽だった。  やらかしたヤツが、ひどい目に遭う。見逃す手はない。どんな娯楽よりも血まみれで生々しく、リアルだった。  処刑台の上で双子の道化師が踊る。 「今日も絶好の首斬り日和だね! 兄さん!」 「首斬りは最高だからね! 大入り満員さ! 弟よ! 僕たち兄弟が首を斬られた日ほどではないけれどね!」  道化師の双子は、左右対称に動いた。双子の動きは鏡合わせ。自分の首を指先の上で回し、ボールトワリングのように、腕から腕に転がした。人に非ざるものたち。群衆の誰にも双子の道化師の姿は見えていないようだ。 「あの道は今日も誰も近づかないね! 兄さん!」 「イプシランティの道だからね! 弟よ!」 「こわいよこわいよ! 僕の首を斬ったイプシランティが来るよ! 兄さん!」     
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