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「頬に逆十字のあざがあるだけでも気味が悪いったらないのに。うそまでつくのかい?
本当に気持ちの悪い子供だね」
『僕にだけ見える頬の赤い蛇は、悪魔の兆し(きざし)』
『僕はいらない子供だった』
1452年、東欧。城塞都市ジルジウ。街の公会堂前広場には、処刑台が据え付けられていた。処刑は、一罰百戒の裁きであり、正義であり、教訓であり、何よりも娯楽だった。
やらかしたヤツが、ひどい目に遭う。見逃す手はない。どんな娯楽よりも血まみれで生々しく、リアルだった。
処刑台の上で双子の道化師が踊る。
「今日も絶好の首斬り日和だね! 兄さん!」
「首斬りは最高だからね! 大入り満員さ! 弟よ! 僕たち兄弟が首を斬られた日ほどではないけれどね!」
道化師の双子は、左右対称に動いた。双子の動きは鏡合わせ。自分の首を指先の上で回し、ボールトワリングのように、腕から腕に転がした。人に非ざるものたち。群衆の誰にも双子の道化師の姿は見えていないようだ。
「あの道は今日も誰も近づかないね! 兄さん!」
「イプシランティの道だからね! 弟よ!」
「こわいよこわいよ! 僕の首を斬ったイプシランティが来るよ! 兄さん!」
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