第一章 See What I've Become

4/77
75人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
首のない双子の道化師の幽霊が、お互いの頭をジャグリングして舞い踊る。  死刑執行人、イプシランティの道。イプシランティのイニシャルYが彫られた道が、ジルジウの街の裏通りを縦横に走る。忌まわしい死刑執行人。蝿の王。人々から忌み嫌われ、蔑まれる。死刑執行人がかぶるつばひろの帽子には、鈴がいくつもついている。  鈴なりの音で、死刑執行人の接近を街の人々に知らせるためだ。  死刑執行人は、邪眼、イエッタトゥーレである。邪視。見られた者を不幸にする眼差しだ。死刑執行人は、街の人々を直視することを許されない。死刑執行人は、スリットの開いた遮光器を目につけなければならない。鈴の音が鳴った。広場が静まり返る。  死刑執行人の一行から顔を背けるもの。おそるおそるのぞくもの。ツバを吐くもの。 「緊張するものだな。おかしいか、グレン」  遮光器をかけた血色の良い青年が、かたわらの少年に声をかけた。黒ずくめの服装に、革のベルトをたすきにかけた死刑執行人の装束。背のいかめしい大剣。ベルトのバックルや革はいたみ、壊れている。死刑執行人に物を売るようなものはいないからだ。 「いえ、そんなことは。グイド兄様」     
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!