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ティディエが罪人に宣告した。死刑執行人兄弟の弟、グレンが公会堂広場の地面に杭を打ち込んでいく。華奢な身体に似合わず、きびきびとした動きだ。
やせ細った罪人の男は、ニヤニヤと笑いながら、杭の間に大の字になった。
忌み嫌われるイプシランティ家に、客人と言うものは、めったにこない。
来るとするならば、罪人だ。それも重罪を犯した。イプシランティ家は、預けられた罪人を、ザクセン法にのっとり、拷問する。罪を告白させ、詳細を聞き出すためだ。
拷問は、水責め、足責めだ。拷問は慎重に行われる。ジルジウの街を仕切る三部会が定めた処刑の日の前に死なれると困るからだ。罪人が捕縛される際に負った傷がもとで大体は死んでしまう。その場合は、死刑執行人に落ち度はない。
グレンは、罪人の男の両手両足を杭に縄で縛り付けた。足責めで破壊された膝をひきのばすときに、罪人の男は悲鳴をあげた。群衆が歓声をあげる。
罪人の男は、薄ら笑いを必死に浮かべた。誰にも興味をもたれなかった罪人の人生において最後のハイライトなのだ。死刑の前日、罪人はイプシランティ家の食卓に座る。
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