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海の向こうの災害に、専門校の学生が興味を持つには理由があった。
「モスマンだぜ? きっとモスマンの仕業だぜ。橋の事故のとき、モスマンが予言したらしいぜ」
「モスマンって本当にいるの?」
「モスマンだけじゃねぇよ。ポイントブレザントって他にもUFOとかモンスターの目撃情報があるとこだよ。今だったら手足の長いスレンダーマンがいるかも?」
皆が気味の悪いオカルト的推測を話すと、パソコンに向かう学生が言う。
「地震かどうかも怪しいらしい、アメリカのサイトとかでも、ポイントブレザントは"街が液化したように建物が溶けた"って書き込みがあるよ」
それを聞くと学生達の憶測が、真夏のアスファルトのように白熱した。
UFOからのレーザー砲による攻撃説。
怪人モスマンによる異能力溶解説。
あるいわ巨大不明生物による破壊光線。
全てアニメやSF映画に出くるネタに照らし合わせられた。
「クロト。見ろよ?」
小太りオカメ顔の男子学生の呼びかけを受け流す
学生は、皆が群がる席に背を向け、自分のパソコンに黙々と作業を行う。
髪は耳を覆うほど長い為、前髪を髪留めで端に避けたエスニック風のファッション。
くりっとした目の童顔を引きつらせ、那由多・クロトはつっけんどんに答える。
「今それどころじゃないよ! 課題、今日までに仕上げないと!」
「それ先週のだろ? まだ終わってなかったのか?」
「記憶が……バイトで疲れて寝ちゃったりで、なかなかやれなかったんだよ」
「お前、バイトはっかりで学校は大丈夫なのかよ」
クロトは友達の心配に明確な答えが出せず口ごもる。
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