一) 穴を掘る

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 ざく……ざく……ざく……   辺りは暗闇に覆われている。時刻は夜中の2時を過ぎたころか。  民家から少し離れたこの公園は、名前に「森」と入るだけあって自然が多く、そして敷地面積も広い。外灯が備えられているが、この時間ではそのほとんどが辺りを照らすことはなかった。  ざく……ざく……ざく……  暗闇の中うごめく影は、数分前から単調にその音を奏でている。リズムも強さも変えず、ただ単調に。  ざく……ざく……ざく……  男は穴を掘っていた。  ただひたすらに。無心に。この世界の他の事には一切構うことなく。    男は穴を掘っていた――。
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