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インタビュー
「え? それに何て答えたか、って?」
東京のとあるオフィスビル、小さな応接室で大人が3人向き合っていた。
記者の男とまだ新人だという女、それから小説家になったAだ。
「決まってるじゃないですか、断りましたよ」
「どんな風に言って断ったんですか?」
新人記者の女は、ボイスレコーダーに慣れていないのか先ほどからチラチラとよそ見しながら質問した。
質問内容をくだらなく感じた小説家Aは、うんざりした様子を隠すでもなく答える。
「無理だ、ってそれだけですよ」
早速使い込んでいるらしい手帳はボロボロだったが、新人記者の女は、その事実を誇らしく思っているのだろう。
手帳に一言一句を逃すまいと記していく姿は、何となく手帳を見せつけようとする風でもあったからだ。
「その彼とは、今も連絡を取り合ってるんですか?」
「死にましたよ。卒業してすぐにね」
一瞬呆気にとられる新人記者の女を、横から先輩記者の男が小突く。
「えー我々としても、非常にお聞きしづらいのですが、原因はやはりその失恋でしょうかね?」
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