春の風とけんたいかん

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あるところに青春を謳歌している、 「あーだるい」 ……とは思えない女子中学生が歩いていました。 「中学も定時制になればいいのに」 あくび混じりで歩く彼女、時刻は朝6時を少し過ぎた頃。 天気予報は春の陽気と言えど朝晩はまだ肌寒く感じます。 「朝練なんかある部活に入らなきゃよかった」 重いカバンを肩に食い込ませ、やる気のなさそうに歩く少女。カバンには「よしだよしみ」という手作りのネームプレートが揺れていました。 彼女が朝早く学校へ向かうには所属している部活で朝練が毎日行われるからです。彼女は吹奏楽部に所属し、昨年のコンクールで銀賞を取ったため、「今年こそ金賞を!」と熱心に練習しています。朝練を欠席すると校庭を走らされるペナルティーがあるため、朝が弱い彼女も眠い目を擦り参加しているわけです。 しかし全員が金賞を目指して熱心に練習しているというわけでもありません。 彼女の中学校は部活は強制参加であり、運動が嫌いな彼女は運動部はもってのほか。かと言って、文化部も吹奏楽部と美術部しかありません。ちなみに彼女の絵の腕前は価値のないピカソです。 消去法で吹奏楽部を選んだ彼女は非常に後悔していました。 「これがあと1年以上続くのか……」 2年生に進級し、部活に対する情熱が全くない彼女はとぼとぼと通学路を歩きます。 「あー今日も朝練終わったー」 8時を過ぎ、練習を終えた彼女は仲間たちと教室へ向かいます。 いつも通り席に着き、ブックカバーで隠したマンガを机の下で読んでいます。……立派な校則違反ですね。 そうこうしているうちに朝のホームルームが始まりました。先生の必要なのか微妙な話を聞き流していると、ふと彼女は隣の席が空席であることに気付きました。 「……今日は転校生を紹介します」 クラスがざわっと揺れました。そして小声で色々な話が飛び交います。 ガラリと教室の扉が開き、1人の女の子が入ってきます。 「自己紹介よろしくね」 先生が促します。 「的羽華菜です。よろしくお願いします」 それが彼女の中学生活を大きく変えることになるーー。
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