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して見逃さなかった。どんなお集まりでも、彼女は話題を健康法に持って行った。さあ始まった、と、誰も身を入れては聞いていなかったが、内臓器官にこれと言った疾患も持たず、したがってお医者知らずで、アズマやアレルギー疾患の苦しさや、透析だの点滴だの精密検査だのを知らないで来た人生など、ネネ夫人にとっては実に軽蔑すべき、取るに足りないものだった。彼女はヒト科はすべからく、何らかの持病に悩まされるべきであって、慢性疾患のない人間には脳みそもない、と見なしているのは確かで、そう思っている事を別に隠しもしなかった。ネネ夫人は、糖尿病ですらない人間がこの世にのうのうとしている事が、不甲斐ない政府役人よりも許せないたちだった。
「ネネがね、エレンは、豚の甘辛煮ばっかり大食いしてたから、命を縮めたんだって、言うんですよ」
「豚の、何ですって?」
「豚の甘辛煮よ、エレンの大好物だったの。豚の甘辛煮で太る前のエレンは、ほっそりして、とても美しかったんですよ」
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