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同じ事を、スーザン・ファビエ夫人からも聞いたことがある。スーザンとエレンは大昔、同じカソリック系女学校に通っていた。「あたしたちは、お互いが生き証人なんですよ。臨機応変で嘘ばっかりついてきた年齢の、本当のところは本人でさえ忘れているのに、同級生が生きている限りごまかせませんからね。ええ、若いころのエレンはほっそりして、それはきれいでしたよ。今や誰も信じないから、エレンはお財布に昔の写真を入れて持ち歩いてるから、今度見せてお貰いなさい。まるで別人よ。今のエレンは写真の三倍はありますからね。おや、ジュリー、涙が出るほど笑わなくてもいいでしょう。マスカラが剥げますよ・・・。そうよね、お若い方にしてみれば、今や人間離れしたばばあが、かっては瑞々しい気にあふれていて、きれいな音楽を聞いて涙を流したし、胸の張り裂けそうな恋もしたなんて、嘘だろ、と思うでしょうね?でも、燃えたぎるような情熱を持て余してい
た時代が、自分にもあった事を、思い出すのさえ億劫になる時が、お若いあなたにも必ず来ます。ほかの事はともかく、老いだけは万民平等ですからね」と、辛口スーザンは笑っていたものだ。
香港ジーンは、「エレンが亡くなって、これでまた、ブリッジの相手探しに、苦労が増えるわ」と言いながら、電話口でしばらくすすり泣いていた。
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