1人が本棚に入れています
本棚に追加
カナの声に口の端がすこーし引きつったのは見なかったことにしよう。そうしよう。
「あ、そういえば、俊英さんおかーさんにまた花を見立ててくれたんですね? ありがとうございます」
カナが魔法の朝顔の隣にあるきらきらの芽を見ながら俊英さんにお礼を言う。
「大切に育てて立派な芽を出してもらいますね」
「はあ」
張り切って言うカナに俊英さんが困った熊さんの顔をする。
「ほら早くご飯食べよう。私お腹ぺこぺこ」
カナが困った熊さんの表情を見る前に私は一人で台所に入った。
「おー美味しそう、美味しそう」
カナのお料理は見た目だけ見れば、どこかのファミレスにも負けないくらいだ。それでいてあの味を表現できるんだから、やっぱり我が子ながら天才だと思う。
「でしょー。俊英さん行きましょう」
「そんなに引っ張らなくともカナさんの料理は逃げないよ」
聞こえてくる声に、カナの料理は逃げないけれど、俊英さんの胃は逃げ腰だな、と判断した。キッチンには香ばしい匂いが漂っていて、カナの気持ちのように俊英さんにまとわり付いている。
「いい匂いだね」
期待を込めたその物言いい、笑いそうになる。カナの実力を俊英さんはまだまだ知らない。
「じゃあ、俊英さんには一番大きいのをあげますね」
最初のコメントを投稿しよう!