きらきらの芽

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「んー。おかーさん、また買ってきたの?」 それだけでカナには私が抱えているビニール袋の中身がピンときたようだ。 乳白色の袋に映えるようなこげ茶の植木鉢を取り出して、ベランダへと置いてあげた。植木鉢には土が見えるだけで、今はまだ主役のいない劇みたいだけど、もう少ししたらこの鉢植えから大スターが生まれるのだ。 「今度はなあに?」 少しでも早くそのスターが見られるように私は鉢植えをゆっくりとさすった。 どうか大きくなりますように。 これが私のいつもの儀式。コツは赤ちゃんをあやすようにさすること。 「きらきらの芽、だって」 「は? 何そのうさんくさいの。こないだは魔法の花だっていって、朝顔の種買ってきたじゃない」 カナの呆れた声に乗せてこつんと私の頭をこづくように少し高めの音が踊りだす。 「すごいね」 「え?」 ベランダの窓を閉めて、カナの横にちょこんと座った。 「しゃべりながらひけるなんてすごいなって」 長方形の正体はちょっと小さめのエレクトーンだ。壁の薄さと管理人さんの髪の毛の量が比例している安アパートだからと、音を最小にしてタオルでぐるぐる巻きにすることを考えたカナは頭がいいと思う。     
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