きらきらの芽

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俊英さんはその出張サービス担当の一人なのだ。正確には出張サービス配達担当員だ。まさしく、必殺花屋の運び人。 「きらきらの芽勧められたの」  やっと出てきた豚肉はちれぢれになってルーと絶妙な絡まり具合をみせている。ゴムみたいな噛み応えに惚れ惚れとする。噛み切れなかった豚肉がのどをつるっと滑っていった。 「え? じゃあちゃんと育てなくちゃ!!」 「うさんくさいんじゃなかったっけ?」  ごちそうさまでした。と手を合わせて台所に持っていく。お皿を洗うのは私の役目だ。 「お願いおかーさん! 俊英さんには言わないで」  カナは重ねて持ってきたお茶碗を頭上に掲げた。献上品を取り上げると、スポンジに十分な洗剤を染み込ませる。カナのカレーだとお皿があんまり油っぽくならないのもいい。 「じゃあ、未来の大スターに謝ってきなさい」  白い泡がお皿を覆っていくのが気持ちいい。ベランダを開ける音が聞こえて、泡をそのままにして台所からそっと顔を覗かせた。  カナはベランダから恭しく植木鉢を持ち上げている。チェックポイント一は合格だ。植木鉢だといって侮るなかれ。スターを育てる栄養が水ならば、スターをあやす揺りかごは植木鉢だ。 「うさんくさいなんて言ってごめんなさい」  チェックポイント二つ目も合格。心を込めて謝罪すること。手をつくとなおよし。     
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