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「小さなツルが枝分かれしてきますんで、一番元気のいい奴を残して、あとは切ってやってください。で、うちのお店にも売ってるんですけれど、あの朝顔の支柱。あれを立てて、もちろん竹とかでもいいんですけれど、用意するのが大変ですから。その棒を鉢に立てたらツルを巻きつけてあげてください」
ペンを紙に滑らせていく。わかりにくいところは、俊英さんに絵を描いてもらった。愚直な、とはこういうのを言うんだろうな、というくらい固くてまっすぐな絵だ。
「ツルはどう巻けばいい?」
「決まりという決まりはないですけれど、こう棒にまっすぐに持っていったら途中で棒に垂直に円を描くようにして左巻きに絡ませてこれを繰り返していくんです」
身振り手振りをつけてやってみせてくれる俊英さんは、花の話をしているときが一番楽しそうだなと思う。
「俊英さんとこの支柱を買えばやり方とか書いてあるかな?」
「うちのには入ってますよ。ただ、中身を見たことはないので、どういう風に書かれてるかまではわからないですね」
ふむふむ。今度買いに行こう。こう思い立つとすぐ行動に移してしまいたくなる。足の裏がむずむずする。
「明日にでもお届けに参りましょうか」
「え? いいの!?」
「いつもお世話になってますからね。お安い御用ですよ」
熊さんのおかげで足のむずむずが止まった。
「おかーさん、また俊英さんの仕事増やしてー」
カナがエプロンをしたまま台所から歩いてくる。
「ご飯できましたよー」
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