きらきらの芽

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きらきらの芽

♪ しゃーぼんだーまとーんだ        やーねまーでとーんだー ♪                  ☆ 玄関を開けると、申し訳ないくらい小さなメロディが聞こえてきた。隣の部屋の口笛の方がまだ壁を突き破る力が大きいんじゃないかってくらいに小さい音。 ヒールのすれたパンプスを玄関に放り投げるように脱いでその音に耳をすました。胸の前で抱いていたビニール袋をぽんと小さく腕の中ではねさせる。そうして抱えなおしたビニール袋を持って、足音を立てないように廊下を滑り歩いた。 「ただいまー」 リビングで踊っているメロディたちを蹴散らさないように、そっと口から声を離した。床にはぐるぐるまきの長方形が音符たちのダンスを誘導している。その舞踏会の指揮をしているのは長方形の前で神妙に座っているカナだ。 「おかえりー」 こちらを見もせずにひざでリズムを取りながら、その長方形に近づくように身を乗り出している。音符があでやかに私の耳元を掠めていく。 「カナまたやってるの? もうちょっと音だしたって怒られやーしないわよ」 私と同じようにくたくたな顔をしたカバンをソファに置いて、テレビの前を横切りベランダに向かう。     
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