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宗一郎は目を見張る。百合子の実家は滑河渓谷の奥、大隈町という山間部だ。道前平野を見下ろす山の上。滑河渓谷は、大隈町から松川へと下りてくる国道を、脇に入った場所にある。
「ほら、宗一郎さんと一緒に行ったじゃありませんか。あの石屋寺。あそこに一連の出来事を描いた板絵があった筈です。うちの先祖が、奉納したなんて聞いたような……」
「百合子さん、その話をして下さい。龍を、退治したんですか? 悪い、悪い龍……?」
「……ええ。悪い龍。黒い龍だったそうです。地震を起こし、旱魃も水害を引き起こす……」
そして百合子が話し出す。百合子の語る話に、宗一郎は深く引き込まれていく。
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