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その店に客として訪れたのが西園寺だった。
アプローチは西園寺からで、周防は好みのストライクだったそうだ。いくら隠していても同じ性指向の者同士は何となく解るもので、もとよりオープンな性格である周防の堂々とした態度によりいっそう西園寺は惚れ込む。
まずは足繁く店に通い服を買い、そのうち周防を食事に誘うようになる。何度かデートを重ねbarで酒を呑み、その流れでホテルに向かい身も心も恋人となった。
西園寺に告白されて一年、順調に関係を育んでいる。
仕事が終われば西園寺は周防のアパートに寄り、ひとり暮らしで身につけた料理の腕をふるい周防は彼の胃袋も掴んでいる。
今はまだ夜のデートとホテルや周防のアパートでの逢瀬に限られているが、そのうち西園寺の自宅にも招かれいづれ同棲も視野に入れ──彼を愛するたび周防の夢は広がった。
そして夢のひとつとして楽しみにしていた西園寺との温泉旅行当日。
さすがに妹を家に残し外泊はできないといつもであれば二十二時頃には帰宅するのだが、宿泊先の温泉宿が新幹線で三時間と距離があるため早めに出発しなければならず、初めて彼は周防のアパートに泊まった。
前日の夜はすべてが初めてのイベントとあり、互いに気分が盛り上がり避妊具が尽きるまで肉欲を貪った。当然ながら体力的にも年下である周防のほうが勝り、翌朝も習慣からかいつも起床する時間に目覚めた周防はまだ眠る西園寺の寝顔を堪能する。
そこでふと枕もとに置いてある彼のスマホが目に留まり、line通知がポップアップされていることに気づく。見てはいけないと理性が訴えるが、どうしても内容が気になり目が文字を追う。
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