第三話 指切

60/60
350人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
 復讐とはひとつの美しい正義という。  ならばきっと俺はいつか一大を奪った深い罪に復讐されるかもしれない。 「遥希──後悔はないか?」 「する訳ないだろう。ずっと一大だけを愛してきたんだ、これからも俺の心はおまえだけのものだよ」  空港のラウンジで最後の気持ち確認か。  そんな温い覚悟ですべてを捨てる男がいると思うか。俺たちにもう言葉はいらない、あとは信じる道を進めばいい。  俺たちが搭乗する機のアナウンスが流れる。 「そろそろだな。いこうか」 「うん」  一大の促しに相づちを打つと、肩をならべてロビーを歩く。  たとえ誰に祝福されなくても、世を憚る一生を送ろうとも、一大とふたりでなら俺は怖くはない。貧しくても飢えで力失くしても絶対に俺は後悔なんてしない。  子供の頃に交わした約束。  結婚しようと指切りした日の願いが今叶った。彼のとなりを歩くのは俺だけ、何を捨ててもそれだけは譲れない。  絶対に手放してやるもんか。一大は俺だけのものだ──────  第三話/指切 泣いて謝っても許してあげない/完
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!