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「マジで? すっげ嬉しい。けどいいの、妹さん家にひとりだろ?」
「一泊くらい空けたからってどうってことはない。女とはいえもうあいつも二十歳だ、来年は社会人になる大人がひと晩も独りで過ごせないようでは先が思いやられるからな」
そう話す西園寺は周防の頬を撫でながら、時折りぽってりとした口唇を指で弄びつつ苦笑する。頬と口唇につたう甘い刺激に官能がうずいた周防は、彼の指先に軽く口づけをすると「ん、そっか。じゃあ甘えようかな」と破顔した。
あとはいつものパターンになだれ込むようにして、ふたり一緒にバスルームへと向かうと互いの着衣を脱がし合いシャワーを浴びながら行為に耽る。
そして風呂から上がると今度はベッドに沈み、どちらかが力尽きるか睡魔に襲われるまでセックスを楽しむのだった。
幼い頃に両親を失った西園寺の妹は現実を受け入れることができずに心を病み、今でも両親が帰ってくるのではないかと思うときがあるそうだ。
両親は事故で亡くなったのではなく、やむを得ぬ理由から帰ってくることができない。あるときは自分は両親に捨てられたと口走ったこともあると、過去の闇を西園寺は周防に打ち明けた。
とはいえ彼も言うように妹はすでに二十歳、世間からすれば一人前の女性だ。
いつまでも子供のままではないだろうし、現在は彼氏の影はないがいづれ好きな男ができれば心も落ち着くだろう。
周防との関係はまだ妹に話してはいないそうだが、折を見て告白すると言ってくれている。西園寺とつき合いだして二年、いつか紹介してもらえる日のことを周防は秘かに待つのだった。
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