第一話 変貌

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 〇 〇 〇  最後に俺があいつにしてやる復讐の総仕上げだ。  俺だけじゃない、水緒の心も踏みにじった藤隆を地獄にひきずり落とす。屑な男の末路に相応しい最高のステージは用意した、俺が自ら辺土の渡し守になってやるから覚悟しろ。  身ぐるみを剥がされて尚あいつは車だけは手放さなかった。  だからあえて藤隆の愛車に細工をしてやることにした。久しぶりのセックスで疲れさせておき、眠っているあいだにブレーキホースを傷つけ、一定の速度を越えるとブレーキが利かなくなるよう準備。  何食わぬ顔でベッドに戻ると、藤隆を起こしシャワーを浴びようと促す。それから朝日を見にいこうぜとドライブに誘いだすと、愛人に優しい屑男はまんまと罠に乗ってくれた。  地獄のドライブショーの始まりだ。 「もっと飛ばせよ藤隆。朝日が昇っちまうだろ」 「任せておけ。飛ばすぞ───」  水緒ごめんな、おまえの幸せを壊して。  償おうとしたけど業が深すぎて俺には無理みてえ。だから俺は自分を始末して償うことにするよ。こんなかたちでしか懺悔できなくて悪りぃ……。  おまえを想ってくれる優しいやつと一緒に、どうか幸せになってくれ──────  変貌/終
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