第二話 耽溺

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 2  離婚に向け嫁が俺の実家に内容証明を送ってきやがった。あいつどこにそんな金があったんだ? つか俺やべえんじゃねえのと焦りながら内容を確認する。  嫁にアパートを追い出され実家に戻ってきた日は親父にボコボコにされ、お袋は床に泣き崩れ俺を散々罵倒し踏んだり蹴ったりだった。  けど内容証明に書かれた慰謝料の金額にキレたお袋、それまで嫁に味方だった親父までキレて完全に俺の味方についてくれた。  つか五百万はぼったくりだろ。  それとは別に離婚までのあいだに当然受けるべき権利だと、婚費が月に十万よこせとある。離婚時は養育費としてガキひとりにつき月に六万を要求。  手取りで俺は四十万をもらっているが、これは年に二回のボーナスも含めての計算かと漠然と脳内で電卓を弾く。さすがは俺の嫁、守銭奴なだけはあるぜ。  なんて感心してる場合か。ふたりの子供は俺にとっても宝だ養育費は成人するまで支払うつもりでいるが、月に十二万も払うのに慰謝料が五百万なのは納得がいかねえ。  それなら俺も弁護士をたてて、減額を求めとことん闘ってやるまでだ。親父たちにも了解を得たのでミッション開始、けど調停に持ち込まれりゃ負けるぞと弁護士に言われ撃沈。  そのうえ裁判まで起こされちゃ俺は職を失っちまう。けど俺が無職になりゃ嫁も金を巻き上げるこたできねんだ、ンなの痛み分けじゃねえのと守銭奴の欲を弁護士につついてもらう。  すると嫁はぶつくさ文句を垂れたそうだが、三百万まで減額に応じたそうだ。  俺としちゃもう百万値切れよって感じだが、嫁の気が変わらないうちに応じたほうがいいと弁護士に諭され、胸くそは悪りぃがそれを最終金額と手を打った。
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