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いつからだろう
空に雲がかかってもいないのに
雨が降るようになったのは
お気に入りの場所、人が疎らな展望台
備えつけの双眼鏡にワンコイン
覗き込んだ先に燃える空
何が混じっているかもわからない
重工場の排煙でも濁らせることはできない赤
指の影を絡ませて、手を引き合い帰った道
そのことをちゃかす人はなく、そもそも
通りがからず、分かれ道が近づくと
痛いぐらい手を握り合った
そんな日々も僕らの耳も同じ色に染まっていた、昔
いつからだろう
空に雲がかかってもいないのに
雨が降るようになったのは
集団からはぐれることを恐れて
素の感情を表に出せなくなって
作り笑い、仮面をつくることばかり上手くなった
その仮面にたやすくヒビを入れたのは
夕暮れ時に見た僕の影だったんだ。
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