目が醒めると・・

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目が醒めると・・

体が押される感覚で目が醒めた。 ぼんやりとした意識の中、何が起きたのかと考える。 目は開いているはずなのに、視界は闇に包まれたままだ。 顔に何かの感触を感じる。 あぁ、私は目隠しをされているのだろうか? 閉ざされた視界が急速に私の思考を奪ってゆく。 体は無事か?怪我はない?? 焦る気持ちをなんとか抑え、私は身体を擦った。 腕は、動く。痛みもない。 ただ、下半身は全く動かすことが出来なかった。 まるで何かにがっちり固定をされているようだった。 腕が動くのは不幸中の幸いである。 暗闇という恐怖から早く解放されたい。 私はすぐさま自由な右手で顔に触れる違和感に手を伸ばす。 そして、 その何かを押し上げてみた。 意外に、力ない私の指でもそれはすんなりと顔から離れていった。 目に映ったのは愛しい愛しい恋人の姿。 あぁ、この重みは彼だったのか。 ほっと一息をつくと同時に、ふと嫌な考えが脳裏をよぎる。 恐る恐る首を横に捻ると、以前愛した彼が私を覗き込んでいた。 反対側は、その前に愛した彼の腕だ。 ・・1度大きく息をつき、意を決して私は部屋の中を一目した。 そして、過去に愛した恋人たちが自分の周りを取り囲んでいるということに気がつく。 あぁ、そういうことだったのだ。 私の下半身が動かない理由。身体がベッドから離れない理由は。 私は多くのものを愛してきた。 最後にそのものたちの下で死ねるのならば本望だろう。 こんなに幸せなことはない。 私は安らかな気持ちで、再び自らの視界を閉じたのだったーー・・
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