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赤い傘
晴れの日の夕暮れに、赤い傘の女に声をかけてはない。
声をかけると、魅入られて黄泉の国に連れて行かれるとか、取り憑かれるだとか噂されているが、本当のところは定かではない。
いわゆる、都市伝説というやつだ。
俺は、今、オカルト記事ばかりをネットサーフィンしていて、この記事に目が留まった。
魔物には、影が無い。それを誤魔化すために、晴れの日でも赤い傘をさしているのだという。
もし、影が無いことに気づいてしまうと、魔物は言うことを聞かなければならないというのだ。
「へえ、魔物を傅かせることができるなんて。無敵じゃないか。」
俺は、くだらない都市伝説を鼻で笑った。
それは、あくまで誰かの作った都市伝説のはずであった。だが、次の日、俺の目の前に、それは現れた。
雨上がりの強い日差しの中、誰もが傘を畳んで泥交じりの水を跳ねながら歩いているのに、一人だけ赤い傘を差して、バスターミナルに佇んでいる女がいた。
赤い傘のせいか、顔は紅潮しているように見え、透き通るような白い肌までも赤く染め上げて、幻想的に佇んでいた。
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