春の魔法

2/10
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
枝の先が膨らんだ、さくら。 グラウンドの砂を巻き上げる、少し暖かい風。 高校の校舎。私は2階の教室で1人、外を見ていた。 窓から見る校庭には、あちこちにもう春の気配を感じる。 クリスマスに彼氏がいないって嘆いていたのが、つい昨日の事みたい。 (早いなあ…) 小牧と一緒の委員になって、もう半年が経つ。 大好きで大好きで、1人でいる時なんて悶えちゃうぐらい大好きなのに、私はあいつに憎まれ口ばっかり叩いている。 ハズレのはずの委員決めのくじは、ペアの相手が小牧だったから、私にとってはもう大当たり中の大当たりだった。 (なのに…) もっと仲良くなりたかったのに結局ケンカばっかりで、あっという間に3月になってしまった。 3年ではクラスが変わるから、一緒のクラスでいられるのも、もしかしたらあと数日になってしまうかも知れない。 (せっかく2人で委員だったのに、何にもできなかったなあ…) 自分のヘタレっぷりが情けない。 明日の卒業式の準備のために、2年の委員である私たちは、放課後残る事になっていた。 「眩しいだろ、ここ」 声で振り向くと、あいつがいた。 嫌そうな顔で、教室に入って来たあいつが、小牧。 「外が気になるんだもん」ヤツの姿を見ただけでドキドキしちゃって、私は窓の外に目をやった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!