春の魔法

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(あ、柔らかい……) そう感じる余裕が持てるぐらい、結構な時間、しっかりキスされたと思う。 ゆっくりと、唇が離れる。 「な、なんで……?」 最初に出たのは、その言葉だった。 (なんで、小牧が私にキスしたの?) 普通に恋人つなぎの状態で手をギュっと握られて、壁に押しつけられてた。 「なあ、……オレと付き合わない?」 「……?!」 驚いて見上げた、小牧の顔は、照れてるみたいな…でも真剣な。 (こんな顔、するんだ…) その表情を見て、私は愛しいって、ホントに強く思った。 「……うん」 私は小さく頷いた。 まさかこんな日が来るとは。 信じられなくて、嘘でしょって疑念が頭をグルグル回っていたけれど、それ以上に息がかかるぐらい近い小牧が目の前にいるから…。 「マジで、いいの?」 「うん」 「ウソだろ」 見た事のないぐらい、小牧の真面目な表情。 「ウソじゃないよ…。私も、…今、…告っちゃおうかなって思ってたもん」 私の言葉に彼は一瞬驚くと、再び近づいてくる。 「!」 小さく、またキスされた。 もうこれ以上されたら、心臓がヤバイ。 体の力が抜けちゃう。 「……あ」 知らずにグっと力が入ってたお互いの手だったけれど、私の力が緩んだら、ストンと手が落ちた。 「離れた」 「うん」 小牧も私もお互いに自分の手をじっと見た。 別に、普段と何も違わない。 触ってみても、汗ばんでたけど、ベトベトしてるとかそういうんじゃない。 ただ彼の体温が移ったみたいに、すごく熱かった。 「なんだったんだろ…」 私は言った。 「うん…。お前、大丈夫か?」 小牧は立ち上がり、私の腕を掴んで起こしてくれた。
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