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 街はすっかりハロウィンムード一色だ。  いや、田舎なのでそれほど目立ったことは無いのだが、スーパーやコンビニにはパンプキン味の期間限定商品がところ狭しと並んでいる。  もう十月か……。と僕は感慨深く思った。あやかし美容院で働くようになって今日で四日目を迎えようとしている。それでも僕には一カ月程経った気分でいた。  昨日のお客さんもひとりだけだった。昨日はおばあさんが「十二時に閉めていいわよ」と言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。本来なら夜中の三時までは開けているのだが、おばあさんもしばらくはお客さんは増えないだろうと思ったのだろう。慣れきたとはいえ、疲れがたまっていた僕にとってはありがたかった。  起床したのは午前十時。  二度寝しようかと考えたが、せっかく天気も良いことだし外に出ることにした。欠伸が出そうになったが、僕はそれを必死に噛み殺した。  ほぼ開店と同時に入ったスーパーは、まだそんなに混んでいなかった。「いらっしゃいませーおはようございますー」と挨拶してくれた店員さんから買い物カゴを受け取ると、僕は店内を物色して回った。部屋の段ボールは相変わらずだが、どうにかキッチン回りは片付けた。なので、久しぶりに自炊でもしようと、ここを訪れたわけなのである。  でも、何を作ろうかいまいち決まっていない……。どうしようかな。あまりにおいがキツイものは避けたいし……。  とりあえず、野菜売り場をうろうろした。すると、初めから千切りにカットされているキャベツの袋詰めを見つけた。これは便利だぞと、僕はそれをカゴに入れた。次はメインだ。  すると、どこからともなく香ばしいにおいが……。僕が辿り着いたのはお総菜売り場だ。見ると、「今日の広告の品」と赤いシールで張られたパックの中に美味しそうなヒレカツが三枚入っているではないか。これは買うしかない。僕はそれをカゴの中にいれた。ついでにペットボトルのお茶を買って帰ろう。そうすれば沸かさなくてすむし……あっ。  自炊するが目的で来たのに、これじゃぁ何にもなってないや。僕は心の中で苦笑いした。まぁ、今日くらい良いか。  僕は飲料物の売り場まで行ってペットボトルのお茶をカゴに入れた。自炊は明日から頑張ろう。
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