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「それで、何でわざわざ人間界に? まさか、お買いものをするためじゃないでしょうね?」 「……そのまさかですよ、マダム」  ヨヤミさんは溜息を吐いた。 「今日はトマトが安いと聞いて……人間に頑張って擬態してみたんですが、レジが終わって力尽きたところを、彼に助けられましてね……」 「まぁ! アオちゃんが居なかったらどうなっていたか!」 「……仰る通りです」  ヨヤミさんは項垂れた。何だか母親と息子の会話みたいだ。 「あの、ヨヤミさんはいったいどんなあやかしなんですか?」  それを聞いたヨヤミさんは怪しく笑った。しかし、顔色が悪すぎるため、全然迫力が無い。 「私は、人間の血を好んで飲むあやかしだよ」 「血……」  僕は一歩後ずさってしまった。ヴァンパイア、吸血鬼、そういった言葉が頭の中を駆け巡った。  その様子を見たヨヤミさんは、困ったように笑った。 「ああ、あまり驚かないでくれ……。我々の一族が人間の血を飲んでいたのは私の曾お祖父さんくらいまでだからね」 「そ、そうなんですか?」 「そうだよ。添加物や加工品など……人間の食生活が変わっていくごとに、人間の血は不味くなってしまって、とうてい飲めるものじゃなくなってしまったんだ」 「そうなんですか。じゃあ、今は何を飲んでいるんですか?」 「良く人間がイメージするだろう……。トマトジュースやバラの花なんかをいただいているよ。今日も、自分でスムージーを作ろうと思ってトマトを買いに来たんだ。人間界の野菜は美味しいからね」
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