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ヨヤミさんの髪を切りながら、僕は彼に聞いた。
「そう言えば、ハロウィンの時期はお忙しいんですか?」
僕はおばあさんの言葉を思い出す。「もうすぐハロウィンだから」と、確かおばあさんは言っていた。
「そうそう……。マダムから聞いたのかな?」
「はい。詳しくは聞いていないのですが……」
「もう一カ月を切ってしまったね。そうなんだ、私はこの時期が一番忙しい……」
ヨヤミさんは息を吐いた。
「あやかし界もね、最近じゃ皆で集まってハロウィンのパーティーを行うのが一般的になったんだよ」
「そうなんですか!?」
僕は、都会でのハロウィンの様子を想像した。
男女問わず、様々な仮装をした人たちが街を練り歩く。中にはヴァンパイアの仮装をする人だっている。ヨヤミさんにそっくりな姿を何人も目撃することになるだろう。僕は、人ごみとか、そういうのが苦手なので無縁の世界だと思っていた。しかし、目の前にそういったパーティーに参加している人が居る。僕は少し好奇心がわいた。
「ヨヤミさんも、何か仮装とかするんですか?」
「仮装……。というより正装? させられるね」
ヨヤミさんは苦笑する。
「私みたいなのは燕尾服やらスーツにマントやら……。そういった雰囲気の服装を期待されるんだ。それっぽい感じだろう?」
「確かに」
僕は頷いた。
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