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「まぁ。気障なことしてくれるわね」  ヨヤミさんが置いていたバラの花束を花瓶に移しかえながらおばあさんが言った。口調は怒っているが、表情はどことなく嬉しそうだ。花束をもらって喜ばない女性は居ないということか。勉強になりますヨヤミさん。  時刻は午前八時。  またソファーで眠ってしまった僕はおばあさんに起こされた。そしてまた朝ご飯を御馳走になって今に至る。 「今日は土曜日ね。混むかしら」 「混んでくれると良いんですが……」 「あら、ごめんなさい。大丈夫、焦らなくてもいいのよ」  昨日のお客さんもヨヤミさんひとりだけだった。別にもう焦ってはいないが、やはり少しだけ心配だ。ほんの少しだけ……。 「やっぱり休日はいつも混むんですか?」  僕はおばあさんに聞いた。 「混むわねぇ。お仕事がお休みの人が多いし、どちらかといえば日曜日の方が忙しいかしら」 「なるほど……」 「まぁ、ゆっくり頑張ってちょうだいね」  おばあさんは机の上に花瓶を置いた。それだけで室内が華やかに見える。店内の雰囲気作りも大切だな、と思った。 「さぁ。まだこんな時間だし、一度帰ったら? 休める時に休んでおかないと身体がもたないわよ」 「はい、そうします」  僕は、手提げかばん一つを奥から取り出して帰る支度をした。 「では、また夜に。朝ご飯、ご馳走様でした」 「はいはい。気を付けてね」
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