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明り取りの小さな窓から外を見ると、満開とはいかない桜が淑やかにひらひらと舞っていました。
『今年の新入生の挨拶って、高槻さんとこの次男坊だろ?』
『ああ、恵一君の弟さんか‥‥』
まだ名前も知らない教師達の声を背に、僕は舞台の裏手からこっそり体育館を抜け出します。
外は思っていたより北寄りの風が強く吹いていて、一月前に季節を巻き戻したかのような寒さでした。
何か羽織ってくればよかったと溜息を吐きながら、隣接していた倉庫の裏で体を抱えるようにしゃがみこみます。
「君、入学式からサボりですか?」
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