17人が本棚に入れています
本棚に追加
うち、やっぱり、威さんが好き
それから数日。
威さんは来まへん。
うちも会いに行く勇気なかったんやけど。
そしたら、夏休みに入って、まきちゃんが朝早くに、うちの家にとびこんできました。
「聞いた? さなちゃん、今日、結納なんやって!」
「ええーッ!」
結納? いつのまに?
さなちゃん、まだ十六え?
うちと同学年なんやもん。年はごまかしてへんかったはず。
「結納? 誰となん?」
まさか、威さんやないやろね?
でも、まきちゃんが言うには、
「銀行の頭取の息子さんやって。さなちゃん、べっぴんさんやから、前々から話はあったんやって」
なるほど。ほんで、さなちゃん、強引に威さんに……。
うちは、まきちゃんと二人、さなちゃんの家にかけていきました。
「さなちゃん! 結婚するって、ほんま? 結納なんやって?」
おさななじみの家やさかいにな。
家の間取りは、よう知っとります。
八畳ほどの客間に、晴れ着を着た、さなちゃんがすわっとりました。お相手は、よかった。まだ来てへん。
さなちゃんは、うちとまきちゃんを見て、さみしそうに笑いました。
最初のコメントを投稿しよう!