うち、やっぱり、威さんが好き

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「みやちゃんには負けるわ。うちは、あきらめるけど、みやちゃんはあきらめたら、あかんえ?」 「うん。うち、絶対、あきらめへん」 うちは、あきれとるまきちゃんを残して、そのまま、かけだしました。もちろん、威さんの長屋にです。 「威さん。威さん! あけてぇ。あけてくれへんと、戸ぉ、けやぶるえ?」 そしたら、なかから、大きな笑い声が聞こえてきました。寝巻き姿の威さんが、髪をクシャクシャしながら、ガラリと引戸をあけて出てきます。 「朝から、にぎやかだなぁ。みやちゃんは。どうしたんだ? ああ、もう夏休みに入ったんだろ? しばらく勉強会はお休みな」 むむぅ。距離をとってきはったなと、うちは思いました。 威さんは大人やし、うちが威さんを好きなことなんて、うちよりさきに知っとったんやろね。 でも、うち、負けへんえ。 恋は勝負や。勢いや。押して押して押しまくるんや! 「威さん!」 ずいっと土間のなかに入りながら、うちは、うしろ手に引戸をしめます。 「みやちゃん。どうした? 顔が怖いぞ」 「からかわんといて! うち、威さんが好きや!」 威さんは両手を腰にあてて、さて、どうしたものかと考えるようです。胸の穴に……今日は美人さん、おれへんのやね。     
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