17人が本棚に入れています
本棚に追加
「穴?」
「どこに?」
「せやから、胸んとこに」
「胸……?」
「みやちゃん……目ぇ、おかしいんちゃう?」
さなちゃんと、まきちゃんの目つきが、つきささります。うちは、あわてて言いわけしました。
「えっとぉ、き、着物の……?」
「ああ。着物」
「独り身なんやもん。つくろうてくれる人がおらんのやね」
なんとか、ごまかせました。
でも、これでハッキリしましたな。
やっぱり、うち以外の人には、威さんの胸の穴は見えてへんのんどす。
なんで、うちにだけ見えるんやろ?
もしかして、うちのご先祖に陰陽師でもおったんかな?
威さんは狐の変化なんかもしれへん。
そんなことを真剣に考えとったら、のぼせそうになりました。
「みやちゃん。うちら、さきにあがるえ」
手ぬぐいで前をかくした、さなちゃんが言うたので、うちも、あわてて湯船から出ましたん。
「うちも、あがるわぁ」
「みやちゃん。顔が真っ赤やない。倒れたらあかんし、ここで、ちょっと休んでからあがりよし。ほなな。明日、学校で」
ふぅ。さなちゃんは、ほんま世話焼きのべっぴんさんやなぁ。
「みやちゃん、気ィつけや。うちも帰るわ」と、まきちゃんも言いました。けど、去りぎわに、イケズな笑いかたするんよね。
最初のコメントを投稿しよう!