むむむ、胸に穴が…

4/7
前へ
/19ページ
次へ
「穴?」 「どこに?」 「せやから、胸んとこに」 「胸……?」 「みやちゃん……目ぇ、おかしいんちゃう?」 さなちゃんと、まきちゃんの目つきが、つきささります。うちは、あわてて言いわけしました。 「えっとぉ、き、着物の……?」 「ああ。着物」 「独り身なんやもん。つくろうてくれる人がおらんのやね」 なんとか、ごまかせました。 でも、これでハッキリしましたな。 やっぱり、うち以外の人には、威さんの胸の穴は見えてへんのんどす。 なんで、うちにだけ見えるんやろ? もしかして、うちのご先祖に陰陽師でもおったんかな? 威さんは狐の変化なんかもしれへん。 そんなことを真剣に考えとったら、のぼせそうになりました。 「みやちゃん。うちら、さきにあがるえ」 手ぬぐいで前をかくした、さなちゃんが言うたので、うちも、あわてて湯船から出ましたん。 「うちも、あがるわぁ」 「みやちゃん。顔が真っ赤やない。倒れたらあかんし、ここで、ちょっと休んでからあがりよし。ほなな。明日、学校で」 ふぅ。さなちゃんは、ほんま世話焼きのべっぴんさんやなぁ。 「みやちゃん、気ィつけや。うちも帰るわ」と、まきちゃんも言いました。けど、去りぎわに、イケズな笑いかたするんよね。     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加