第1章

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剥がれた場所を見つけた途端、口笛を吹いて紘一は眼を輝かせる。もちろん、周りには和俊しかいない為、他に止める人はいない。 和俊は長い溜息を吐くと、 「分かったよ。一緒に行くよ」 諦めた表情で答えると、すでに塀をくぐり始めていた、紘一の後に続いた。 くぐり抜け、立ち上がると、庭と思われる場所に行き当たった。草は自分達の背丈ほどにまで、生い茂っており、コバエや蚊が近づく音が大きくなる。 たまらず何度も両手で虫を払いのける。和俊のその行為も眼に止めず、紘一は草を掻き分けると、一階の窓の割れた部分へと手を伸ばし、内側から鍵を開けた。 窓は簡単にスライドし、室内へ入り込む事が出来た。容易に侵入が成功した為、この行為が犯罪に結び付くとは思えない程。 「うわ……きったね」 「埃もひどいね」 床には所々、穴が開いていた。更に、夏の暑さがこもっており、汗がとめどなく流れ落ちる。外のほうがまだ涼しいと思えた。 歩くたびに埃が舞う。二人は口元を手で覆いながら、部屋を見て歩いた。 空き家の為か、家具や家電が一切無く、むき出しになったフローリングが埃をかぶっているだけ。 子供が興味を引きそうな、不気味な物体や壁のシミ等はどこにも見受けられなかった。    だが、二階までの階段を上り、ある部屋のドアを開けた瞬間、二人は息を呑んだ。 その部屋だけ、異様に綺麗であったからだ。 床には埃が全く無く、心なしか空気も悪くない。窓も割れておらず、鍵を開け、スライドしてみると、爽やかな風が二人の頬を撫でた。とても、居心地の良い空間だと思えた。 「この部屋いいな!今度から、ここで遊ぼう」 「けど、勝手に入っていいのかな。怒られないかな」 「大丈夫だろ。ここら辺、すごく人が少ないし、くぐってる所見られないなら、ばれないだろ」 「うーん。そうかな」 和俊はこの部屋の異常さに気付いてはいたが、あえてそこは指摘しない事にした。公園で本を読むよりも、この部屋で一人でゆっくり読めるなら、本望である。 「じゃあ、今度から、ここで遊ぼう。俺、この部屋気に入ったから、漫画とか持ってこよう」 「僕も、本持ってこよう」 二人は頷き合うと、誰にも見つからないように空き家を後にした。 一週間後 「カズ!今日もあそこに行くぞ」
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