第1章

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「そんな大声で言ったらばれちゃうよ」 「大丈夫だって!ちゃんと周り、見張ってるからさ」 二人にとっては、あの部屋で遊ぶ事は最早日課になりつつあった。塀さえくぐってしまえば、周りの眼を気にせず部屋の中で遊べる。 部屋の中は、二人の持ち込んだ漫画や本が沢山置かれていた。今日も、数冊お互いに持ち込む予定だ。 空き家までの道のりを歩く。今日も夕日が首や背中を照り付けて暑い。けれど、あの部屋に入れば、不思議と体温が下がっていく事を実感していた。 塀をくぐろうと、地面に膝をつこうとした瞬間、後ろから声をかけられた。 「ちょっといいかな?」 二人は驚いて振り向く。腰に警棒と携えた一人の警察官と視線が合った。表情は穏やかであるが、空き家へは入らせないという気配が隠し切れていない。 和俊は警官の姿を見て、愕然とした。 (しまった。やっぱり誰か見ていたんだ。どうしよう) 紘一は警官に対して、ふてくした態度を取り続けていた。  警官は優しい声音で、笑顔を絶やさずに二人に質問する。 「三日前ぐらいから、子供が空き家に入るのを見たって言われたんだ。大体、夕方頃に、 塀をくぐってるって、近所の方が言われててね」  「何だよ。空き家だから、別に入ってもいいじゃんかよ」 「うん。その気持ちは分かるけど、この家は近々取り壊す予定がある程、とても古い建物でね。もしかしたら、怪我をしていたかもしれないよ」 紘一は反発を続ける。和俊は怯えきり、何度も謝り続けていた。しかし、警官の次の言葉に二人は眼を丸くする。「 「いつも、三人が塀をくぐっていたって、言われたけど、もう一人はどこかな?二人の後ろにいつも付いて行ってたと言われたよ」 二人は押し黙る。そんな人物いるはずが無い。警官が嘘をついているようにしか思えなかった。 「あれ?どうしたのかな?あっ!あの子かな……おーい!こっちへおいで」 警官は二人を交互に見やっていたが、視線を二人の向こう側、歩道の先へと向け、手を振った。 二人は振り返る事が出来なかった。状況を把握する事が出来ない。和俊は考えた。 自分達以外に、もう一人いた?そんな馬鹿な。では、あの部屋は自分達以外に、先に使っていた人物の……
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