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「ひめいし、さ」
射干玉の髪。ふわりと上品なジャスミンの香りが鼻をくすぐる。
その少女は、わたしに、ほほえみを、むけて。
「そこ、妾の机なのだけれど・・・どうしたのかしら?」
どこか、困ったように微笑して。どこか独特な「わたし」の響きを染み渡らせて。
いけない。
「だ、だめ・・・っ!こんなの、あなたに見られていいものじゃ・・・!!」
止めようとするけど、ジャスミンの香りが神経を融かしてしまったように、上手く動けない。
ああ。その瞳に映ってしまう。醜い、醜い凡俗共の悪意が。
「・・・あら。酷いことをするのね・・・」
赤い唇の両端が、僅かに上がる。
「はやく、早く消さなくちゃ。こんなひどいもの・・・」
こんなもの。こんなもの!彼女の机にあっていいものではない!!!
「ええ、そうね・・・」
ふわり。
彼女の手が私に触れる。
「へ」
「こんなひどいものも。こんなひどいことするひとも。」
「妾の世界には要らないわ」
「だからね・・・」
だれもいない、朝の教室。
白くて細くてきれいな、ジャスミンの香りがする指。
そのゆびが、わたしのくちびるに、ふれて
「あなた・・・お掃除してくれないかしら」
とろり。
のうしんけいの、とけるおと。
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